【人事学望見】第1328回 事業場内の受動喫煙防止 紫煙のこもる職場では働けない
現行の求人票には、受動喫煙対策に関する記載欄が設けられている。いうまでもなく、これは令和2年4月に全面施行された改正健康増進法とリンクしている。「もうもうと紫煙が立ち込める」職場は過去の遺物となったが、そこへ至る道のりは平坦でなかった。
社会に定着と愛煙家擁護
ひと昔前、新入社員がヘビースモーカーの隣の席に配属されると、わが身の不運を呪うほかなかった。喫煙に関する制約はなかったので、隣席の先輩は、1日中、自分の席で紫煙を吐き出し続けている。苦情をいう度胸はないだろうし、仮にあったとしても、相手が耳を傾けてくれるはずもない。
この時代、嫌煙の権利を声高に主張する人間は、「ちょっとエキセントリック」で、社会常識に欠けるとみなされがちだった。古い判例では、「喫煙は、個人の嗜好として長きにわたり承認されてきたところであり、非喫煙者も、若干の寛容さを持することも依然として期待され、このような喫煙に対する世の大方の見方も、看過すべきでない」(名古屋市教員嫌煙事件=名古屋地判平10・2・23)と述べたものもあった。
しかし、健康意識の高まりに合わせ、改善に向けた機運が醸成されてきた。法整備の経緯を振り返ると、3つの節目が存在する。
第1は、平成14年の健康増進法の制定だ(平成15年施行、栄養改善法を改称)。そのなかで受動喫煙防止が努力義務として定められた。
第2は、平成26年の安衛法改正だ(平成27年施行)。こちらは労働者を使用する事業者に対し、受動喫煙防止のための措置を講ずるよう求めた(努力義務)。
第3は、平成30年の健康増進法改正だ(令和2年全面施行)。オリンピック開催が追い風となり、ついに喫煙に関して強制力のあるルールが法定されるに至った。…
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