【裁判例が語る安全衛生最新事情】第391回 京都建設アスベスト上告審事件 予見できず建材メーカーの責任棄却 最高裁第一小令和3年5月17日判決
Ⅰ 事件の概要
建設アスベスト事件の上告審判決は、令和3年5月17日に都合4件がいっせいに言い渡された。すなわち、神奈川建設アスベスト事件(第1陣)、東京建設アスベスト事件(第1陣)、京都建設アスベスト事件(第1陣)、大阪建設アスベスト事件(第1陣)のそれぞれの上告審判決である。ここでは、そのうちの京都第1陣事件判決について紹介する。
京都建設アスベスト事件(第1陣)の控訴審は大阪高裁平成30年8月31日判決(判例時報2404号4頁)であるが、原告X1らは主として京都府および近郊県内において建築作業に従事した者またはその遺族ら27人であり、石綿関連疾患にり患したとして、被告国およびY1社ら建材メーカー32社を訴えた。控訴審判決は、被告国と建材メーカー2社(株式会社ケイミュー(Y1社)と株式会社クボタ(Y2社))の責任を認めた。そのため、原告X1ら、被告国、被告建材メーカー2社がそれぞれ上告(上告受理申立)した。
本事件の争点は多数あるが、本件上告審では、屋外建設作業による石綿粉じんへのばく露について、被告国またはY1社、Y2社につき、石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたかどうかについて判断することとなった。
判決は、被告国については平成13年~平成16年9月30日の期間での予見可能性、Y1社・Y2社については平成13年~平成15年12月31日の期間での予見可能性についてそれぞれ判断し、いずれも控訴審判決を取消して、予見できなかったものとして、被告国、Y1社、Y2社に対する請求を棄却した。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告国の責任
(1)原審の判断
屋外建設作業に係る石綿粉じんの濃度についての測定結果は、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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