【“ジョブ型”にこそ――時代到来!キャリア権】後編 雇用慣行 人事権濫用と判決も 会社主導の配転めぐり/諏訪 康雄

2022.05.12 【労働新聞】
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労働者の決定権は僅少

 前編では、キャリア権に関する現状を概観し、注目されるようになった背景を明らかにした。さらに法的基盤の検討も行い、名称に「職業生活」を含む法律が誕生していることなどを確認している。後編では雇用制度とのかかわりを分析する。

 キャリア権の法的理念があるからといって、労働者の一存でただちにキャリアの決定や形成ができるわけではない。雇用では、企業の経営戦略や人事戦略との摺り合わせ方式が、立ちはだかる。

 労働者と使用者をつなぐ雇用契約は、一方が労働に従事し、他方がその報酬を与えるとの合意により、成立する(民法第623条)。確かに、労働者のキャリアをめぐり、使用者が一方的に決定する権限を持つことを所与としてはいない。だが、雇用契約に基づく指揮命令権により、一連の業務を通じてキャリア展開に影響を与える。職業上のキャリアは、業務・職務への配置、そこでの日々の課業とそれに必要な知識や技術技能を蓄積することの継続を通じて、具体的、段階的に形成されていくからである。

 日本型雇用慣行の場合、採用時に職務内容も勤務場所も限定せず、使用者に広範な決定権限(人事権)を委ねる(いわゆるメンバーシップ型雇用)のため、キャリア構築をめぐる労働者側の決定権はきわめて限定されてしまう。

 その反面、…

筆者:法政大学 名誉教授 認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク 理事長 諏訪 康雄

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令和4年5月16日第3352号12面 掲載
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