【裁判例が語る安全衛生最新事情】第394回 社会福祉法人Y保育園事件 不祥事の負荷で心理支援足りず責任 長崎地裁令和3年1月19日判決
2022.06.10
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
被告は、保育園を経営するY社会福祉法人である。原告X1~X3は、亡Aの夫と2人の子らである。
亡AはY法人に保育士として、平成28年度は3歳児クラスを、平成29年度には0歳児クラスを担当して勤務していたが、平成28年3月に、いわゆる虐待騒動が起こった。すなわち、平成28年3月23日、保育園の保護者、元保護者らが、帰宅途中の保育士を呼び止め社内に引き込むなどして、保育園に対して、保育士が園児を虐待していると訴え、事実関係を確認したいと要望した。そして翌3月24日に、保育園において、保護者らとの間で会合が開かれ、保護者ら20人と新聞記者など2人、さらにはテレビ局の記者2人が出席した。その席で一部の保育士は保護者から強く責められた。その会合は3時間にも及んだ。3月27日、保育園の虐待疑惑がテレビで報道され、翌28日には長崎市が特別行政指導監査を実施し、全職員に対して聞き取り調査を行った。そして、長崎市は、保育園において関係条例の不順守が認められたとして、しつけの範囲として園児を叩くなどの行為を改め、保育士に関する研修などを行い、保護者の信頼回復に努めるよう指導するとともに、虐待・体罰防止に関する改善計画の作成、実施結果の報告などを求める勧告をした。
保育園では、会合直後の平成28年3月下旬から職員のストレス状況や体調を把握するために、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2022年6月15日第2404号 掲載