【解雇無効時の金銭救済制度 委員が深掘り!検討会報告書】第1回 制度検討の意義 選択肢示すに過ぎず 導入の是非は労政審で/神吉 知郁子
2022.06.30
【労働新聞】
和解やあっせん 解決金に隔たり
労働契約の、使用者からの一方的解約――これが「解雇」である。労働者にとっては生活基盤を揺るがす、深刻な出来事となり得る。そこで労働法は、差別的な理由による解雇や、労働者の正当な権利行使に対する報復的解雇を禁じるとともに、業務上の疾病による休業や産前産後休業期間など、一定の期間について解雇制限を定めている。そのような場合に当たらなくても、使用者の解雇権の行使には、権利濫用による制限がかかる。これが、民法の一般条項を根拠とした判例法理として確立し、現在は労働契約法16条に明文化されている、「解雇権濫用法理」である。
解雇が客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当であると認められないと判断されると、その解雇は法的には「無効」となる。すなわち、違法な解雇がなされたと考える労働者が裁判で請求するのは、(解雇の意思表示はなされたが、それは客観的合理的理由と社会通念上の相当性がないため無効であり、したがって今も労働者として)労働契約上の地位にあることの確認ということになる。
労働契約上の地位が確認されると、…
筆者:東京大学大学院 法学政治学研究科 准教授 神吉 知郁子
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令和4年7月4日第3359号11面 掲載