【裁判例が語る 安全衛生最新事情】第397回 サンセイほか事件② 過労による脳出血で直属上司に責任 横浜高裁令和3年1月21日判決
2022.07.26
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、吸収前のC社に勤務していたが、C社が吸収合併された後は被告Y1社の社員となり、岩手県にあるB支社で勤務していた。当初C社の金型などの製造をしたり、その後はB支社で営業技術係長を務めていた。
Y1社の代表取締役は被告Y3、元代表取締役である被告Y2、専務取締役兼工場長が被告Y4である。
亡Aは平成23年8月6日、自宅のトイレで意識を失い、救急車で病院に運ばれたが、脳幹部出血で翌8月7日に死亡した。
亡Aの時間外労働時間数は、発症前1カ月85時間、2カ月前111時間、3カ月前88時間、4カ月前51時間、5カ月前63時間、6カ月前75時間であり、6カ月平均は79時間(小数点以下、切り捨て)であった。
所轄労働基準監督署長は、X1の労災請求に対して、亡Aの発症は業務上であるとして支給決定をした。
原告X1は亡Aの妻、原告X2、X3はその子らである。X1らは、解散したY1社および、取締役であったY3、Y2、Y4らを被告として損害賠償請求訴訟を提起し、一審判決(横浜地裁令和2年3月27日判決)は、Y1社の責任を認めたが、Y2、Y3、Y4らの取締役の第三者責任を否定し、さらに、亡Aの過失を7割として過失相殺をした。X1らは控訴したが、Y1社らは控訴・付帯控訴のいずれもしなかった。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Y4の取締役としての責任
Y4は、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2022年8月1日第2407号 掲載