【裁判例が語る 安全衛生最新事情】第399回 染料・顔料中間体製造工場事件 薬品の健康被害で予見可能性認める 福井地裁令和3年5月11日判決
2022.08.29
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告X1~X4は、染料・顔料中間体を製造している被告Y会社の福井工場で勤務し、発がん性化学物質といわれるオルト-トルイジン(以下「本件薬品」という)を原料として、染料・顔料の製造業務に従事していた。
その時期は、若干異なるが、昭和63年以降平成30年ごろまで勤務していた。そのオルト-トルイジンは、昭和63年11月ごろから平成27年12月まで使用されていた。X1らはその薬品にばく露して、その結果、平成27~28年までの間に、膀胱がんにり患した。
X1らは、その発症した膀胱がんについて、Y社における業務に起因した疾病であるとして労災申請したところ、労働基準監督署は労災決定をした。
X1らは、Y社に対して、安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求訴訟を起こした。なお、Y社は、X1らの膀胱がんについて、福井工場で使われていた本件薬品のばく露によるものであることを争わないと述べた。
Ⅱ 判決の要旨
1、Y社の予見可能性を裏付ける事情
平成13年当時、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2022年9月1日第2409号 掲載