【裁判例が語る安全衛生最新事情】第401回 池一菜果園控訴事件 叱責後の自殺に責任認めた一審肯定 高松高裁令和2年12月24日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y1社は、フルーツトマト生産の会社であり、Y2はその代表取締役であり、Y3はY2の娘であり常務取締役である。亡Aは、死亡当時59歳の女性であり、自らフルーツトマトの生産農家であったが、後にY1社に期間職員として雇用され、亡Aは統括責任者・統括部長となった。
一審判決(高知地裁令和2年2月28日判決)当時の原告は亡Aの夫X1と、子どもX2、X3であったが、訴訟係属中にX1が死亡し、X2、X3はX1の相続人となった。
亡Aは、かなりの時間外労働により疲労していたうえに、平成22年2月6日、同月8日の2回、Y3から強く不満を言われて叱責されたことが直接のきっかけとなって2月9日自宅で自殺した。
亡X1は、須崎労働基準監督署長に、Y3からいわれなき強い叱責を受けて自殺したことを理由として労災請求をし、平成24年11月20日に遺族補償年金などが支給された。
X1、X2、X3らは、被告をY1社、Y2、Y3として、Y1社に対して安全配慮義務違反による損害賠償責任、不法行為責任、Y2、Y3に対しては、会社法429条に基づく損害賠償責任を求める訴えを提起し、一審判決は、X1らの請求を認容して被告Y1社、Y2、Y3らの責任を認めた(一審判決についての紹介は、本連載380回で紹介している)。Y1社らは一審判決を不満として控訴し、本件はその控訴審判決である。
Ⅱ 判決の要旨
本判決は、基本的に一審判決を肯定し、Y1社らの控訴を棄却した。
1、亡Aの時間外労働など
亡Aの死亡するまでの6カ月間の時間外労働は、一審判決のとおりであり、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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