【歴史と事例から学ぶ!賃金制度設計】第11回 ベースアップの活用方法① 職場の課題解決目的に 10年代半ばから役割変化/西村 純
2022.10.20
【労働新聞】
制度に基づかない昇給
賃金は、賃金制度のみで決まるわけではない。労使交渉によってもたらされる昇給もある。日本では春季生活闘争(以下「春闘」)において、定期昇給の維持や「ベースアップ」の実施について交渉が行われている。ところで、定期昇給の維持は、「賃金体系維持分」といった形で表記されるものである。社員の年齢構成などによって変化するので一概には言えないが、たとえばある企業ではこの部分に必要な昇給原資を賃上げ率に換算すると1.5~1.7%程度になる。正社員の賃金制度を取り上げた回で定期昇給の存在を指摘したが、この昇給は自動的かつ機械的に実施されるわけではなく、労使の間で実施の了解が取られたうえで行われている。労働者を代表して交渉に当たる企業別組合に対して厳しい目が向けられているが、こうした地道な取組みが人々の賃金の上昇をもたらしていることは、忘れてはならないことである。
さて、春闘を通じたもう1つの賃上げが「ベースアップ」である。元々春闘は、個別労組の交渉力のみでは必要な賃上げを確保できないという労組側の判断から、賃上げ要求をそろえ、企業側からの回答内容もできる限りそろえることを目的に開始された。…
筆者:労働政策研究・研修機構 副主任研究員 西村 純
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令和4年10月24日第3373号11面 掲載