【裁判例が語る安全衛生最新事情】第403回 防衛大学校事件① 予見困難で安全配慮義務違反認めず 福岡地裁令和元年10月3日判決
2022.10.27
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、平成25年、同26年当時、被告Y(国)の設置する防衛大学校に2年次まで在校していた者である。Xは、在校中に上級生や同級生8人らから暴行、強要、いじめなどの11個の行為を受け防衛大学校を退校した。
防衛大学校は、幹部自衛官となるべき者の教育訓練を行っており、各隊に置かれた指導教官から学生に対して教育訓練が行われるほか、将来における部隊指揮などの能力を育成するために、全寮制の学生舎生活において、主として上級生から下級生に対し、規律を順守させるなどの学生間指導が行われる。
Xは、その上級生および同級生ら8人に対して、本件と併行して不法行為に基づく損害賠償請求を提起したが、その訴訟において7人は不法行為が成立したとして請求が認容された(なお、その上級生および同級生は公務員であり、公務員個人の行為については不法行為責任は免責されるはずであるが、いずれも7人はその主張をしなかったので責任が認められた)。1人については請求は棄却された。
Xは、①防衛大の組織上の安全配慮義務違反行為、②履行補助者である指導教官らの安全配慮義務違反を主張して、Yに対して損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Yの安全配慮義務
Yは、信義則上、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2022年11月1日第2413号 掲載