【裁判例が語る安全衛生最新事情】第404回 防衛大学校事件② 指導教官の安全配慮義務違反認める 福岡高裁令和2年12月9日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、被告Y(国)の設置する防衛大学校に平成25年4月~平成27年3月まで2年間在校していた者である。Xは、在校中に上級生や同級生8人らから暴行、強要、いじめなどの11個の行為を受け防衛大学校を退校した。
防衛大学校は、幹部自衛官となるべき者の教育訓練を行っており、各隊に置かれた指導教官から学生に対して教育訓練が行われるほか、将来における部隊指揮などの能力を育成するために、全寮制の学生舎生活において、主として上級生から下級生に対し、規律を順守させるなどの学生間指導が行われる。
Xは、その上級生および同級生らに対して、本件と併行して不法行為に基づく損害賠償請求を提起したが、その訴訟において7人は不法行為が成立したとして請求が認容された(なお、その上級生および同級生は公務員であり、公務員個人の行為については不法行為責任は免責されるはずであるが、いずれも7人はその主張をしなかったので責任が認められた)。1人については請求は棄却された。
Xは、①防衛大の組織上の安全配慮義務違反行為、②履行補助者である指導教官らの安全配慮義務違反を主張して、Yに対して損害賠償請求訴訟を提起したが、一審判決(福岡地裁令和元年10月3日判決)は、被告Y(国)への請求を棄却し、原告Xが控訴した。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Yの安全配慮義務違反
Yが学生に対して負う安全配慮義務は、防衛大のなかで行われる学生間指導によって…
執筆:弁護士 外井 浩志
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