【裁判例が語る安全衛生最新事情】第405回 La Tortuga事件 過労が急性心筋炎を劇症化させる 大阪高裁令和3年3月25日判決
事件の概要
亡Aは、被告Y1社の経営するフレンチレストランで調理を担当していた者である。被告Y2はY1社のオーナーシェフで代表者である。
亡Aは、平成24年11月24日に急性心筋炎と診断されて入院し、症状が悪化したので補助人工心臓装着手術を受けて一旦は軽快退院したが、その後も体調は改善せずに、平成26年1月3日に再入院して同年6月に脳出血により死亡した。
原告X1は亡Aの妻、原告X2は亡Aの父、原告X3は亡Aの母である。
X1らは、亡Aが発症した心筋炎は、亡Aの長年にわたる時間外労働(1カ月250時間にも及ぶ長時間労働)により、免疫力が低下したものであるとして、Y1社に対しては会社法350条による責任または安全配慮義務違反、Y2に対しては会社の代表として不法行為または会社法429条1項により損害賠償責任を負うとして、訴えを提起した。
第一審(大阪地裁令和2年2月21日判決、本連載No.379で紹介)は、業務との因果関係を肯定し、Y1社とY2の責任を肯定して、総額で約8430万円もの賠償請求を認めた。本件はその控訴審である。
なお、本件は、労災請求においても争いがある。すなわち、原告妻X1は、労災請求をしたところ、大阪中央労働基準監督署長は業務外とし、審査請求、再審査請求のいずれも棄却したため取消訴訟を提起したところ、一審大阪地裁は、業務外決定を取消した(大阪地裁令和元年5月15日判決)。しかし、その後、控訴審(大阪高裁令和2年10月1日判決)では、再逆転で業務上の扱いは取り消されており、最高裁に係属している。
このように、業務と死亡との間の因果関係について争いが先鋭化している事案である。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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