【裁判例が語る安全衛生最新事情】第406回 鹿児島市中学校事件 配慮義務を怠り精神疾患が悪化 福岡高裁令和3年2月10日判決
事件の概要
公立中学校に通う生徒であるX1は、入学後まもなく吹奏楽部に入ったが練習が過酷であったことから体調を崩し、医師から適応障害の診断を受けたため、原告父X2、原告母X3は、教師などに対して部活動の負担軽減が必要であるとの診断書を提出してX1に対する負担軽減の配慮を求めた。
これを受け当該中学校でも、吹奏楽部の顧問教師に負担軽減を指示するとともに、職員会議でX1に対する配慮事項を検討し、学校担任や顧問教師などを中心にX1の状態を保護者と情報を共有するなどの対応をした。しかし、X1はその後も部活動に積極的に参加していたことから、顧問教師も、X1の適応障害が次第に回復してきたものと認識し、X1の希望通りに練習参加を認めるようになり、母X3からはX1がまだ治療中であるとして配慮を求められたが、それに対しては十分に対応せずに、練習を無断欠席した場合に罰則を科するなどの対応をした。その後、2年生になってから、X1は、意欲が減退し、中学校を欠席したり、部活動に参加できないことが多くなったが、教諭などは、X1の主治医や両親X2、3らとの協議を経ることもなく、X1に対して、練習を休むのであればX1本人が申し出ること、他の生徒に迷惑を掛けないようにコンクールへの出場の可否を速やかに判断することなどを伝えた。結局、その直後にX1は吹奏楽部を退部し、不登校が続いて県外の中学校に転校した。
X1~X3らは、精神的な苦痛を被ったとして、被告Y市に対して、債務不履行としての配慮義務違反、または国家賠償法1条1項の不法行為責任の損害賠償請求をした。一審判決(鹿児島地裁平成31年4月16日判決)はX1らの請求を棄却したが、X1~X3らは、控訴した。
判決の要旨
1、中学校教諭らの責任
本件中学校の教諭らは、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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