【裁判例が語る安全衛生最新事情】第407回 住宅型有料老人ホーム事件 窓からの転落に安全配慮義務認めず 鹿児島地裁令和2年10月30日判決
2022.12.26
【安全スタッフ】
事件の概要
被災者亡Aは、認知症を患っていたが、被告Y1社が運営する住宅型有料老人ホーム(本件施設)に入居し、さらに、その施設の一部を賃借して訪問介護事業を営む医療法人Y2から訪問介護医サービスの提供を受けていたところ、施設の2階の居室の腰高窓から転落して、胸椎破裂骨折、後頭部挫創などの傷害を負い、その後死亡した。
本件施設の各窓には、鍵つきストッパーが設置されており、これを使用すると窓は15センチ程度しか開かないようになっていたが、事故当時には、当該ストッパーは使用されていなかった。原告らは夫X1と子ども2人X2、X3であり(なお、X1は訴訟中に死亡し、X2とX3が訴訟承継している)、Y1社、Y2法人は、それぞれ入居契約、訪問介護契約に基づく安全配慮義務に違反した、または、黙示の特約に基づく安全配慮義務、黙示の委任契約に基づく安全配慮義務に違反した、事務管理に基づく安全配慮義務に違反したと主張して、Y1社、Y2法人に対して損害賠償請求訴訟を提起した。
判決の要旨
1、本件入居契約と被告Y1社の責任
本件入居契約上のY1社の義務は、本件施設や本件居室を利用させるほかは、生活サービスの提供に止まるものであり、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2023年1月1日第2417号 掲載