事件の概要

　 原告Ｘは、被告Ｙ社の工場において、昭和36年９月から少なくとも昭和54年12月まで、長年にわたり製缶構造物の電気溶接作業を行ってきた。そして、その電気溶接の作業の際には、保温材として布状の石綿を使用し、石綿の含まれた防護服を着ることがあり、その結果、石綿粉じんにばく露されてきた。

　Ｘは平成11年３月にＹ社を退職してきたが、平成27年12月に胸腔鏡下右肺上葉部分切除の手術を受けたところ、胸膜中皮腫にり患していることが判明した。

　Ｘは、中皮腫にり患したのは、Ｙ社の工場で製缶構造物の電気溶接の際に発生した石綿粉じんによるものとして、Ｙ社に対して安全配慮義務違反による損害につき、慰謝料2500万円のみを請求した。

判決の要旨

１、石綿のばく露

　Ｘは、Ｙ社に…

執筆：弁護士　外井 浩志