【迫る2024年4月 運送業の時間管理~荷主対策・処遇向上~】第5回 管理方法の見直し 標準時間をルール化 休憩・洗車・点検などで/小山 雅敬
デジタコ導入を躊躇する会社も
自動車運転者の労働時間の改善について検討する前に、そもそも中小運送会社において労働時間管理が適正に行われているかどうかをみていきたい。
全国の運送会社に対してコンサルタントとして数多くかかわってきた経験からすると、残念ながら過半数の会社が、正しい労働時間管理を行っていないのが実態だ。車両規模10台未満の零細規模では、大半と言っても過言ではない。しかも、管理の方法に問題があるというレベルではなく、そもそもまったく把握していない会社も未だに多くみられる。デジタルタコメーター(以下デジタコ)を導入している会社でさえも、正しい管理をしていないケースがある。
さらに、運送業は長時間労働が常態化している会社が多いため、ドライバーの労働時間を管理・記録するとその実態が明るみに出てしまい、監査や監督指導の際に厳しい行政処分を受けることを警戒している経営者が存在する。また、運んだ物や輸送距離によって賃金を変動させる「歩合給」で支給している会社の中には、労働時間の概念が労使ともに乏しく、労働時間を管理する必要性自体を感じていない会社もある。
賃金台帳内の労働時間数の欄や時間外労働時間数の欄が空欄になっている会社の多くは、前述した2つのような理由を主張する。その場合には「労働時間を管理していないことの方が、より厳しい処分を受けますよ」と忠告し、早急な是正を促している。
厚生労働省は、平成29年1月20日に、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以降、「ガイドライン」)を策定した。以降、厚労省や業界団体などがさまざまな周知活動を進めてきた。全国のトラック協会による適正化指導や労働基準監督署による臨検、運輸支局の行政監査などにより、相当数の是正が実施されてきたものと思われるが、未だに労働時間の管理方法を整備していない事業者が散見される。2024年の上限規制適用に向けて、さらに徹底した周知活動が必要になるだろう。とくに中小零細企業のうち、業界団体などが行う研修に普段全く参加しないような、時間管理意識の低い事業者に対してどのように周知していくかが課題だ。
ガイドラインの内容に沿って、運送業の現場における労働時間管理の実態を解説する。…
筆者:㈱コヤマ経営 代表取締役 小山 雅敬
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