【事故防止 人の問題を考える】第149回 熟練作業者の安全問題(2)
2023.02.27
【安全スタッフ】
とっさに上手く動けずに被災する
前回は、熟練作業者が現場のリスク低減に大きく貢献していることと、安全問題として心身機能の低下を原因とする災害があることを説明しました。今回はその続きとして、具体的な災害データを見ていきます。
◎墜落・転落災害と転倒災害
厚生労働省HP「職場の安全サイト」に掲載される休業4日以上死傷災害データ(平成27、28年分、全数のおよそ4分の1抽出データとされる)を用いて、全産業を対象に、30代と50代の墜落・転落災害、転倒災害を比べてみます。
墜落・転落災害、転倒災害と心身機能の関係をみると、バランス感覚が低下すると墜落・転落災害、転倒災害ともに発生しやすくなります。ただ、墜落・転落、転倒しても、とっさにうまく動ければ、例えば、つまずいて転倒してもとっさに手をつけられれば、被災を免れますが、とっさにうまく動けないと被災につながります。また、視力の低下もこれら災害の起因物となる開口部や段差の気づきの遅れにつながり、筋力や柔軟性の低下もバランスを崩すなどの原因につながります。
表1のとおり、30代と50代の休業4日以上死傷者数を平成27、28年の2年合計で比べると、…
執筆:労働安全衛生総合研究所 安全研究領域特任研究員 高木 元也
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2023年3月1日第2421号 掲載