【対応力を鍛える人事学探究】第24回 身だしなみの制限 人事権濫用で違法に “個人的自由”へ配慮を/大野 孟彬
2023.03.02
【労働新聞】
男性の長髪を禁止は有効?
従業員の「身だしなみ」について、企業は、どこまでルールを設け、指示や指導をして良いのであろうか。身だしなみは、私生活や、究極的には幸福追求権などの個人の自由を制約する観点があるため、無制限に使用者からの規制が認められるものではなく、業務上の必要や企業ルールとしての合理性が認められる範囲でのみ規制や注意指導が認められる。また、これらに違反した従業員に対し、懲戒処分などの対応をした場合、その有効性についての線引きが問題となる。
この点、一律に規範や具体的な裁判例があるものではないが、一例として、郵便事業(身だしなみ基準)事件(大阪高判平22・10・27)を紹介する。このケースは、郵便局において、ひげを生やし長髪の状態で勤務していた男性従業員が、その外貌を不利益に考慮され、マイナスの人事評価に基づく賃金カットや担当職務に関する差別をされたうえ、上司からひげを剃るよう執拗に求められたことが違法であるとして、不法行為などに基づく損害賠償請求を求めた事案である。
裁判所(原審およびその判断を維持した高裁)は、…
筆者:第一芙蓉法律事務所 弁護士 大野 孟彬
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令和5年3月6日第3391号12面 掲載