【人的資本経営期のHR用語集】第25回 賃上げ 不満解消は一時的 旧態然の管理続けば/木谷 宏

2023.03.09 【労働新聞】
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経営者の楽観性に危惧

 前号では金銭的報酬に非金銭的報酬(キャリアと時間)を加えた総報酬(トータル・リワード)の重要性を述べた。今回は改めて賃上げについて考えてみたい。過去30年にわたってなぜ日本の賃金は上がらなかったのか。わが国の非製造業の生産性は著しく低い、国際競争に勝つためにはコスト削減が必要である、ASEANよりも賃金水準が高い――こういった説明が繰り返され、物価下落も相まって賃金は据え置かれ、正社員は非正規労働者に置き換えられていった。そして残ったのは格差と低賃金、内部留保である。

 本紙1月2日号において法政大学の藤村 博之教授より、賃上げ・モチベーション向上・生産性向上の関係が明快に語られ、人件費というコスト以外で競争力を強化し、賃上げによる労働者の意欲向上促進が必然であるとの結論をみた。“儲からないから賃上げしない”から“賃上げして儲ける”への発想転換である。しかし今年の春闘はこの意図を反映できるのか、2つの懸念が残る。

 まず、今回の賃上げは…

筆者:県立広島大学大学院 経営管理研究科 教授 木谷 宏

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令和5年3月13日第3392号12面 掲載
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