【裁判例が語る安全衛生最新事情】第413回 肥後銀行事件 労働時間管理の不備で株主代表訴訟 熊本地裁令和3年7月21日判決
2023.03.28
【安全スタッフ】
事件の概要
本件は、B銀行の株主であるXが、その夫である亡AがB銀行に勤務していた平成24年10月に40歳で自殺により死亡した事件に関して、B銀行の取締役の責任を問うた株主代表訴訟である。
Xは、亡Aが業務に起因して自殺したことでB銀行が訴訟を提起され、賠償金、訴訟費用、弁護士費用を支払い、法令の順守を重視するべき銀行として信用毀損されたのは、取締役であった被告ら(Y1~Y11)らが、従業員の労働時間管理体制の構築にかかる善管注意義務を懈怠したと主張して、会社法847条の2、同法423条1項に基づき、賠償金約2億6420万円および遅延損害金、その遅延損害金をB銀行に対して支払えとする株主代表訴訟である。
別件の民事訴訟は、亡Aの自殺はB銀行の安全配慮義務違反によるものであったとして、Xと3人の子、Aの母が訴えを提起し、平成26年10月17日の判決では、X、子3人、Aの母に対して合計で約1億4240万円の賠償を命じる判決が下され、B銀行は控訴せずに判決が確定している。なお、B銀行は、C銀行と共同して平成27年10月1日付でD会社に対して株式移転をすることにより、株式移転子会社となっている。
判決の要旨
1、B銀行の労働時間管理の仕組み
平成24年当時のB銀行における労働時間にかかる管理体制は、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2023年4月1日第2423号 掲載