【対応力を鍛える人事学探究】第27回 海外留学・研修後の費用返還請求 業務性の有無が焦点 契約は消費貸借形式に/小山 博章
2023.03.23
【労働新聞】
帰国まもなく従業員が退職
近年、クライアントからの相談として、海外留学・研修から帰任して間もなく退職した元従業員に対する留学・研修費用の返還請求に関するものが増えている。一般的には、帰任後、早期に退職した場合には費用を返還させるという合意をすることによって、間接的に辞職を自粛させるとともに、退職した場合に費用の回収を図る、という方法が採られている。
もっともこのような合意は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償を予定する契約をしてはならない」と定める労働基準法16条に違反するかが問題になる。この点、会社が留学や研修の費用を金銭消費貸借契約に基づいて労働者に貸し付け、帰任後に一定期間勤務することを返還免除の要件として取り扱えば、労働契約の履行・不履行と無関係であるため、労基法16条違反にはならないと解されている(長谷工コーポレーシヨン事件〈東京地判平9・5・26〉)。
ただし、「単に契約条項の定め方だけではなく、労基法16条の趣旨を踏まえて当該海外留学の実態等を考慮し、当該海外留学が業務性を有しその費用を会社が負担すべきものか、当該合意が労働者の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要するものかを判断すべきである」との判示もあるため…
筆者:第一芙蓉法律事務所 弁護士 小山 博章
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令和5年3月27日第3394号12面 掲載