【裁判例を踏まえた非典型労働時間制の要点】第3回 裁量労働制の改正 専門型も同意必要に 適用者は8割以上が満足/岡芹 健夫
2023.04.13
【労働新聞】
労働時間が増える傾向は否定できず
第2回で触れたが、DXやGXなど技術の進歩や、国際比較においてわが国の労働生産性が低下傾向にあることに鑑みれば、裁量労働制の適用範囲の拡大は不回避の流れと思われる。また、労働の実務においては、裁量労働制について、実際に就業している労働者からの満足度は決して低くない。令和3年の厚労省の「裁量労働実態調査」によれば、裁量労働制の適用されている労働者のうち、「満足している」と答えた割合は41.8%で、「やや満足している」の38.6%を併せると80%を超えている。
しかし、裁量労働制は、理屈のうえでは、労働者側からすれば自己管理が求められると同時に、従前の労働時間法制と比較すれば、長時間労働に陥る可能性が相対的に高いことも看過はできない。実際、1週間の労働時間をみると、裁量労働制の適用労働者では60時間以上の割合が9.3%となっている一方、非適用労働者の60時間以上の割合は5.4%となっており(前掲厚労省「裁量労働制実態調査」)、裁量労働制により労働時間が増加する傾向にあることは否定できない。
これを受け、今般の裁量労働制の改正においては、裁量労働制度の濫用防止を強化する対策が盛り込まれている。企業としては、裁量労働制の趣旨を理解し、労働者の裁量と、裁量から生まれる能力発揮の機会の双方を確保することが肝要である。…
筆者:髙井・岡芹法律事務所 弁護士 岡芹 健夫
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令和5年4月17日第3397号6面 掲載