【裁判例が語る安全衛生最新事情】第415回 テーマパーク運営会社事件 暴行でうつ発症も環境調整怠り責任 千葉地裁令和4年3月29日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、被告Y社との間で、平成21年4月1日から契約期間を1年間とする有期の出演者雇用契約を締結した。その後、契約を更新してきた。
Y社は、不動産賃貸業を主目的として ショーやパレードなどの運営を行っている会社である。
平成25年2月7日、Xはショーに出演していたところ、男性客から右手の指を折り曲げられる暴行を受け(本件出来事)、Xは警察に被害届を出すこととなり、また、労災の申請をするつもりであった。なお、その行為を行った男性客は特定はできなかった。しかし、上司はXの申出に真摯に取り合わずに、相手にせずにパワハラ的な言動が繰り返され、「エンターなんだからそれくらい我慢しなきゃ」「君は心が弱い」という始末であった。それをきっかけに、Y社への不信、仕事への恐怖、過呼吸が始まり、平成25年3月の心療内科の診断では「ストレス性障害」であった。
Xは、労災申請を断念し、右手の治療するための通院も断念し、雇用契約が打ち切られるのではないかという不安から、休まずに勤務していた。また、Xは本件出来事の当時の配役を演じると過呼吸の症状が出ることになっていたことから、一時期、同僚との配役の交換を申し出たが、上司(スーパーバイザー)からは「わがままには対応できない」「解雇対象になる」と発言された。同僚も、Xが過呼吸を繰り返したことで配役についての変更を希望することが多くなり、過呼吸であることを同僚には秘していたことから、Xに対する不満を述べることが多くなり、Xに対して嫌悪感を抱くようになり、次第にXは孤立化していった。
Xは、平成28年4月には首痛、腰痛が生じて早退し、平成29年5月に起こった業務上の災害によって同月から8月末まで休職した。さらに、平成30年7月からは頸椎椎間板ヘルニア、頸椎捻挫を理由として休職した。
Xは、上司(スーパーバイザー)や同僚からのパワーハラスメントやいじめを継続的に受け、これによって精神的な苦痛を受けたとして安全配慮義務違反による債務不履行、または不法行為、使用者責任に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1 、Y社の対応の不適切さ
Xは、本件出来事の後、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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