【対応力を鍛える人事学探究】第33回 非違行為と退職金不支給 あらかじめ規定を 裁量認められる場合も/坂井 瞭平
2023.05.11
【労働新聞】
銀行の情報を出版社に漏洩
退職金制度において、懲戒処分を科された場合や懲戒処分事由が認められる場合、退職後に競業避止義務に違反した場合など非違行為が認められた際には、退職金の全部または一部を不支給とする(または返還請求する)ことができると定める会社は多い。しかし、非違行為が認められたとしても、必ずしも規定どおりに不支給が認められるとは限らない。
そのようななかで、懲戒解雇処分を有効とし、退職金の全部不支給も有効としたケースとして、みずほ銀行事件(東京高判令3・2・24)を紹介する。
同事件は、銀行業のY社において、対外秘である行内通達など4件を無断で持ち出し、少なくとも15件を出版社に漏えいしたことなどを理由として懲戒解雇されたXが、懲戒解雇の無効を前提として労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、予備的に、退職金規程の“懲戒処分を受けた者に対する退職金は減額または不支給となることがある”との定めに基づく不支給は許されないとして退職金の支払いを求めた事案である。
懲戒解雇の有効性については、…
筆者:第一芙蓉法律事務所 弁護士 坂井 瞭平
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令和5年5月15日第3400号12面 掲載