【社員がなじむ組織へ オンボーディング実践術】第18回 観察学習の5つの効果 日々の内省から学ぶ テレワークでは実践不可/尾形 真実哉
2023.05.18
【労働新聞】
経験学習に注目集まる
前回、テレワークが奪い取ったものとして、観察学習の機会を挙げた。一方で昨今、経験学習の重要性が論じられている。とくにアメリカの教育学者コルブが提唱した経験学習モデルは、企業の人材育成においても援用されている。
このモデルは、まず個人が置かれた状況のなかで「具体的経験」をすることから始まる。そして、その経験を多様な観点から内省する「内省的観察」、内省した結果を他の状況にも応用できるように自分なりの仮説や理論に落とし込む「抽象的概念化」、得られた仮説や理論を新しい状況下で実際に試す「能動的実験」の4つの概念からなり、それらのサイクルモデルを提示している。ここで注意したいのは、「経験する」という表現が用いられているだけで、「経験学習」という言葉自体は出てこないということだ。学習について示しているのは「内省的観察」である。コルブのモデルの肝は、実は「観察学習」なのである。
分かりやすいモデルだが、経験の質を考慮していない点に、実践的な難しさを伴う。経験を捉える際、考慮しなければならない点に、経験の「時間幅」と「インパクト」が挙げられる。これらを2軸にしてマトリクスを作ると図1のようになる。…
筆者:甲南大学 経営学部 教授 尾形 真実哉
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令和5年5月22日第3401号11面 掲載