【裁判例が語る安全衛生最新事情】第421回 MARUWA事件 連続出張に伴う負荷の注意義務怠る 名古屋地裁令和4年8月26日判決
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、被告Y社に勤務していた者であり、昭和63年に入社後、常勤監査役、人事室長、経理室長、総務室長を歴任していたが、平成25年11月20日に解離性大動脈瘤を原因とする急性心筋梗塞により死亡した。原告は亡Aの妻であるX1、子であるX2、X3である。
被告Y社は、エレクトロニクス用・産業用セラミックおよび電子部品の開発、製造、販売などを業としていた。亡Aは、総務室長として、数多くの業務をこなしていた。すなわち、日常業務として、本社および各事業所の見回り、植木の水やり、委託清掃業者の実施状況の確認などの施設管理、金庫の鍵の管理、全社の車両管理などの設備備品の管理、保険契約やリース契約の更新、その他、各事業所を回っての決算確認や、平成25年3月からは子会社B社の管理部門のマネージャーが退職して欠員であったために毎月数日間出張して経理などの業務を確認していた。
さらにはY社の代表取締役が設立したスペイン財団の業務や代表取締役の個人財産の管理を行うほか、代表取締役が桑名市にある施設を視察するのに同行するなどの秘書的業務も行っていた。
X1は、瀬戸労働基準監督署に労災請求を行い、平成26年6月に同労基署は、亡Aの死亡の業務起因性を認め、遺族年金給付と葬祭料の請求を認めた。
X1らは、被告Y社に対して、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、亡Aの時間外労働時間数
亡Aの…
執筆:弁護士 外井 浩志
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