【ぶれい考】「合意みなし」の不思議/野田 進

2013.02.04 【労働新聞】
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 昭和48年の三菱樹脂最高裁判決に代表されるわが国判例は、「採用の自由」を最大限に保障する立場である。使用者は契約締結の自由を憲法上保障されているのであるから、「いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うか」について、法律等の特別の制限がない限り自由であるとする。今回の前記立法は、このような「採用の自由」原則を真っ向から否定するのではないか。経営者側が、この立法に対する違憲訴訟を提起しても、不思議ではないと思う。

 この点、フランスの立法では、同じような場合に、直接雇用の契約や無期労働契約に裁判所が「読み替える」という考え方をとる。つまり、「合意みなし」という理屈で新しく労働契約を結ばせるのではなく、従前の契約を維持しつつその性質を読み替える技術である。この方法だと、労働者が裁判所で法違反を立証し、読み替えを求めたときに、裁判所の判断で初めて効果が生じる。強行的に合意とみなすのではなく、労働者のアクションが起点となる点で、結果の発生が柔軟である。

 日本の「合意みなし」の新制度は、効力発生が硬直的であり、これを避けるために、派遣受入れを廃止したり、有期労働契約をすべて5年で打ち切ってしまうことになり、かえって雇用を不安定にする「副作用」が現れることになろう。

筆者:九州大学大学院法学研究院 教授 野田 進

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平成25年2月4日第2907号5面 掲載
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