【裁判例が語る安全衛生最新事情】第423回 大器キャリアキャスティングほか控訴事件 兼業によるうつに安全配慮義務違反 大阪高裁令和4年10月14日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、給油所の作業員である。Xは、被告Y1社に有期雇用されて、Q2社がQ1社から委託を受けていたセルフ式による給油所A店、B店の深夜早朝業務を行っていた。その後、XはQ2社が第三者(Q3社)から委託を受けた給油所C店においても夜間運営業務に従事した。さらに、Xは、Q1社からも有期労働契約を締結して、B店における深夜早朝業務以外の時間帯に就労するようになった。
Y1社の管理職Pは、Xに対して過重労働になるから、自身の体調を考えて休んで欲しいと、Q1社での勤務を辞めるように指示した。そして、Xは、Q1社に対して平成26年6月末に退職届を提出して退職した。そのうえで、Y1社は、業務指示書を作成し、これに署名押印ない場合には今後勤務させることはできないと言い渡したが、Xはこれに署名押印しなかったので、Y1社はその後Xを業務に就かせず、平成27年3月31日付でY1社との雇用契約は終了した。
Xは、うつ病・適応障害などの診断を受けて、労基署長に労災請求をしたところ、平成27年11月30日、所轄労基署長は休業補償、療養補償給付の決定を下した。
その後、Y2社は、Q1社を吸収合併したところ、XはY1社、Y2社に対して安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求を起こすと共に、Y1社に対して雇い止めの無効を理由とする労働契約の地位の確認等を求める請求を起こした。一審判決(大阪地裁令和3年10月28日判決、本連載398回)は、Y1社とQ1社との安全配慮義務違反の成立を否定して、結局Y1社、Y2社に対しても安全配慮義務違反の請求を棄却した。本件はその控訴審である。
Ⅱ 判決の要旨
1、Y1社の労働時間管理義務、安全配慮義務
Y1社においてその勤務シフトは、同一店舗に勤務する従業員間でシフト表の案を作成し、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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