【男性育休推進で再考する 労働者の自律的なキャリア形成】最終回 社会経済再生の一手 就労中断「当たり前」に 学び直しなどもしやすく/諏訪 康雄
人的資本開示が主流に
有価証券報告書に、男性の育児休業取得率や管理職に占める女性の割合などが記載され始めた。改正育介法や人的資本重視の流れを受けたものだ。主要大企業における雇用状況の一端が「見える化」されつつある。
たとえば、丸井グループは男性の育休取得率が110.3%(育休等と育児目的休暇の取得率)と管理職に占める女性の割合が18.7%、三越伊勢丹は同じく97.4%と27.0%、三菱UFJ銀行は90.0%と25.2%、鹿島建設は64.2%(総合職)と3.4%、日立製作所は56.8%と7.4%、三菱重工業は31.0%(正規雇用労働者)と2.7%、といった具合にである。業種間や企業間の差異は相当に大きい。
開示内容がこれから充実し、他の大企業や中堅企業、中小企業にまで開示の流れが波及していくようになれば、新卒者や転職者の採用に与える影響は相当なものとなるだろう。先々の法規制や労働市場の動向を見通し、戦略的に各種の雇用状況や働き方の工夫を自主開示しようとする企業も、増えていくに違いない。
とはいえ、事態が一直線に進むとは予想し難い。育休に限らず、介護休業であれ、教育訓練休業であれ、一定期間の仕事中断は、当の本人にとって決心を要するイベントであるばかりでなく、働く周囲の人々にも影響を与えるからである。当人はもちろんのこと、周囲も慣れた対処の仕方を見直し、新たな態勢を取る必要に迫られる。
人間は慣れ親しんだ考え方を簡単には改めない。男性の育休に対処するため、…
筆者:法政大学 名誉教授
認定NPO法人 キャリア権推進ネットワーク 理事長 諏訪 康雄
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