【「当たり前」を問い直す! “制約社員”基準の雇用管理】第5回 柔軟な勤務制度運用の課題② 業務割当てを明確に 適切な「余裕」の重要性/鬼丸 朋子
2023.09.28
【労働新聞】
働く環境変わり緊急対応が増加
個々の労働者の「1日当たりの適正な業務量」を改めて検討するに当たって、①どのような業務を割り当てるか、②どの程度の量の仕事を割り当てるか、③どの程度の「余裕」を持たせるか、という点から考えてみよう。
①どのような業務を割り当てるかに関して、そもそも日本企業はチームで仕事をすることを重んじるため、個々の労働者が担当する仕事の範囲が必ずしも明確でない傾向があることが指摘されている。主な担当業務を定めてはいるものの、チームの別の労働者の業務を急遽割り当てることも少なくない。このように、仕事の範囲が不明確なことは各人の権限や責任の所在が不明瞭であることにもつながる。
この不明確さのおかげで、忙しい人の仕事をみんなで手伝ったり、新しい業務や突発的な業務が発生したときに柔軟に対応できたりすることは確かである。コピー機への紙やステープラの補充や、デスクまわりの掃除や、会議室の準備や片づけなどの雑用や隙間業務も、担当者が必ずしも明確にされずに「空気を読んで」誰かが引き受けている。ポジティブに表現すれば、「職場における助け合い」や「困ったときはお互い様」精神が発揮されていることになるのだろう。だが、自分の仕事の範囲が定まっていないということは、…
筆者:中央大学経済学部 教授 鬼丸 朋子
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令和5年10月2日第3419号13面 掲載