【裁判例が語る安全衛生最新事情】第426回 丸八ガラス店求償金請求事件 機械への巻き込まれで派遣先に過失なし 福岡高裁令和3年10月29日判決
Ⅰ 事件の概要
本件の原告Xは国であり、被告は労働者派遣を受けた派遣先Y社である。Y社は、ガラス製品の加工販売を目的とする会社であるが、労働者派遣会社B社から派遣労働者Aを受け入れて、ガラス研磨機(本件機械)を用いる作業をさせていたところ、平成28年9月20日、本件機械の躯体内のキャタピラに左手を巻き込まれて、第4・5中手骨骨折、左手背皮膚剥脱創、左前腕皮膚剥脱創の診断を受け、緊急手術を行い、平成30年11月23日に症状固定し、左手関節の機能障害につき後遺障害等級第10級の9、左手指機能障害につき障害等級8級の4に該当するとして障害等級準用7級と認定された。
そして被災者Aに対し、X(国)は、労災保険により計約1226万円(療養補償給付965万9360円、休業補償給付164万9413円、障害補償給付95万270円)を支払った。
Xは、派遣先Y社を第三者に該当するとして、Y社の過失割合を50%としたうえで、求償金として約703万円と延滞金の支払いを求める訴えを起こした。
一審判決(福岡地裁柳川支部令和3年5月31日判決)は、本件研磨機は、その構造上、開口部から相当奥深くまで手を入れなければキャタピラにはさまれることはなく、危険性もその程度にとどまるとして、本件機械は構造上危険な部位に覆いがされていると評価できるのであってその余は判断するまでもなくXの請求を棄却した。本件はその控訴審である。
Ⅱ 判決の要旨
1、本件機械の覆いの必要性
実務上、労働安全衛生規則101条1項の「労働者に危険を及ぼすおそれのある部分」とは、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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