【社労士が教える労災認定の境界線】第358回 職場復帰後、激しく注意されうつ病に
災害のあらまし
Aは、B社会福祉法人(介護施設従業員数全体90人)の経理・会計部門で課長として勤務していた。C事務長・D事務員の3人部署だ。Aは強度の便秘となり、それが原因で不眠症となった。Aは自宅近隣の内科と心療内科併設クリニックに通院し、1カ月の便秘治療後、「うつ病」の診断を受け休職した。休職の間、健康保険から傷病手当金を1年ほど受給した。
体調が良くなると、AはB社会福祉法人に職場復帰した。職場復帰3日目午前中に体調が悪くなり、施設長に午後からの年次有給休暇申請を提出し帰宅した。
次の日には体調も良くなり、通常始業時刻に出勤したところ、C事務長から「休むのであれば事前に言わないといけない!D事務員や自分に一言話して帰るべきだ」と激しい口調で注意を受けた。Aは、施設長に年次有給休暇の申請を提出したと反論した。
Aは職場復帰5日目から休み、後日、B社会福祉法人宛にクリニックから1カ月の療養を要するうつ病の診断書が届いた。
Aは休職後職場に復帰したが、短期間でまたうつ病と診断を受け、さらに治療を要することになった。Aは、所轄の労働基準監督署長に職場復帰後のパワーハラスメントが原因によるものとして、労災認定を申請した。
判断
労基署が精神障害の労災認定のための要件を踏まえて、調査した結果、心理的負荷が「強」とはならないと判断。また、職場復帰から1カ月以内ということもあり、業務外となった。
解説
まず、以下に精神障害の労災認定のための要件を示しておきたい。ポイントは3つある。…
執筆:一般社団法人SRアップ21 北海道会
社会保険労務士法人 安藤行政事務所 代表社員 安藤 壽建
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