【裁判例が語る安全衛生最新事情】第427回 旭川公証人合同役場事件 会食断った後も多数送信し不法行為 旭川地裁令和3年3月30日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、公証人である被告Yとの間で労働契約を締結して公証人合同役場(以下「公証役場」という)で書記として勤務していた。Yは、平成30年7月1日に公証人に任命されていた。公証役場には、書記としてYの妻であるAと他の書記Bもいた。なお、Xは書記Bのことが気に入らず、書記Bに辞めてもらって代わりの職員が来てほしいと思っていた。Yは、同年7月20日から、Xに対して、種々のセクハラ類似の行為を行い、Xは、同年11月29日にYに対して「退職届」を提出して、「平成31年7月31日をもって退職させていただきます」と述べ、平成31年2月1日から同年3月末までの年次有給休暇を取得して、同年4月1日以降出勤しなかった。そして、Yは同年4月1日以降、令和元年6月の賞与以外は給与を支払わなかった。
Xは、Yに対し、①セクハラ行為による不法行為として損害賠償責任、②退職勧奨に対する不法行為責任、③労働契約上の地位の確認の3点を求める訴えを提起した。本件では①のセクハラ行為による不法行為責任を中心として紹介する。
Ⅱ 判決の要旨
1、セクハラなどの働きかけ
Yは、平成30年7月20日以降、Xとスマートフォンのメッセージ機能を通じてやりとりし、同年8月中旬ごろには、Xに対して、情報伝達のための業務上の指示だとして、Xが所持するスマートフォンにメッセージアプリであるアプリE(本件アプリ)をインストールするように指示した。そして、Yは、Xに対し、業務時間の内外を問わず、本件アプリを用いてメッセージ、写真、イラストの送信を繰り返した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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