【来春の制度改正に対応 労働条件明示のルール】第6回 採用内々定段階の諸問題 「契約成立」あり得る オワハラも判断に影響/柊木野 一紀
2023.11.09
【労働新聞】
他に手続きの予定なく
採用内定に先行する採用内々定の問題点(取消しやオワハラとの関係)を検討したい。採用内々定とは、正式な採用内定通知(大学卒業見込者の場合、通常は毎年10月1日)よりも前に、企業の採用担当者が応募者に対して口頭で採用が決まった旨を告げることをいう(荒木尚志「労働法」第5版390頁)。
採用内定の法的性質については次回以降に説明するが、10月1日の採用内定通知のほかに労働契約締結のための行為が予定されていないこと、採用内定によって他企業への就職機会を放棄することが通例であること等から、事案にもよるが、大学の新規学卒者について、正式採用による辞令交付(4月1日)を待たず、採用内定時点で解約権(内定取消権)留保付きの労働契約の成立が認められる場合が多い(大日本印刷事件最判昭54・7・20労判323号19頁)。
これに対し、採用内々定は、通常は企業と応募者の双方とも、内々定によって労働契約成立という確定的な拘束関係に入ったとの認識までには至っていないと考えられるので、解約権留保付きの労働契約の成立は認められない(菅野和夫「労働法」第12版234頁)。裁判例をみても、…
筆者:石嵜・山中総合法律事務所 弁護士 柊木野 一紀
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令和5年11月13日第3424号6面 掲載