【提言 これからの雇用・労働法制】第1回 イントロダクション 程良い規制を求めて 企業・法人の性格考慮へ/小嶌 典明

2015.01.12 【労働新聞】
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失われた大人の常識

 誰にでもミスはある。形式的なミスについては、事を荒立てて追及するようなことはしない。かつての国会には、このような大人の常識があった。

 時は昭和22年、片山哲内閣の時代。内閣が憲法施行後初の第1回国会に提出した職業安定法案に誤植があった。

 「念のために申し上げますが、第49条の2行目の中頃から下でございます、『当該官吏をして、その事務所または事務所に臨検し、』となっておりますが、…『事業所または事務所に臨検し、』というのが本当で、誤植になっております」。

 誤植が見つかったのは参議院に付託された法案に限られていたが、9月22日に開催された同院の労働委員会では、委員長が冒頭でこのように説明。その後は、何事もなかったように、議事が進行していく。

 しかるに、平成26年の通常国会では、内閣が提出した派遣法改正案の附則に「1年以下の懲役」を「1年以上の懲役」と書き損じるミスがあったというだけで、法案は廃案を余儀なくされる。

 しかも、この一事をもって、法案全体が欠陥法案であるかのように非難されたのだから尋常ではない。以後のゴタゴタも、その延長でしかなかった。

 ただ、国会議員が改正法案の細部にまで常に目を通しているかというと、かなり怪しい。…

筆者:大阪大学大学院法学研究科 教授 小嶌 典明

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平成27年1月12日第3000号4面 掲載
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