【裁判例が語る安全衛生最新事情】第429回 私立筑紫台高校自殺控訴事件② 手引きに従い自死の回避可能と判断 福岡高裁令和3年9月30日判決
2023.11.28
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
学校法人であるY法人の経営する私立高等学校の3年生であった男子生徒亡Aが平成25年11月に自殺したが、亡Aの父X1、母X2、祖母X3、兄X4、姉X5が被告Y法人に対して損害賠償請求をし、さらにY法人はいじめを阻止せず、亡Aの名誉を毀損したとして謝罪文の掲示を求めた。
一審判決(福岡地裁令和3年1月22日判決)においては、謝罪文の掲示は棄却したものの、X1、X2につき各約1200万円、X3~X5に各88万円の請求を認めた。これに対してX1ら、Y法人の双方が控訴した。
なお、平成22年の自殺の事件を受けて、Y法人の高校では、「再発防止委員会」が策定した自殺予防のための校内体制や教職員がいじめに係る具体的な情報の提供を受けた場合の報告、会議の開催、調査、事情聴取、再発防止委員会への結果報告を定める「危機管理マニュアル」があった。
前回(本誌11月15日号本欄)の第一審に引き続き、本件は労働災害ではないが、安全配慮義務違反の事例であり、紹介することにした。
Ⅱ 判決の要旨
1、予防体制、防止のための手順、防止マニュアルの存在
本高校の教員は、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2023年12月1日第2439号 掲載