【裁判例が語る安全衛生最新事情】第430回 建設アスベスト神奈川第二陣上告事件(解体作業)事件 メーカーの警告表示義務を否定 最高裁令和4年6月3日判決

2023.12.12 【安全スタッフ】
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Ⅰ 事件の概要

 神奈川県に居住して建物の会社解体作業に従事した後に、石綿肺、肺がんなどの関連疾患にり患した者およびその遺族らが、建材メーカーと国を訴えた神奈川建設アスベスト訴訟第二陣の上告審判決である。

 控訴審(東京高裁令和2年8月28日判決)は、石綿建材を製造販売するに当たって建材メーカーが、建物の解体作業などに従事する者に対し、当該建材から生じる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があることを表示すべき義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しなかったことによるものであることを主張し、控訴審判決はこれを認めたが、本上告審の判決はこれを覆した。

 関連する事件としては、神奈川建設アスベスト訴訟第一陣事件の上告審である最高裁令和3年5月17日判決があるが、これは建物の建設作業従事者との関係で、建材メーカーが本件警告情報の表示義務を負うことを認めた。本件では、解体作業従事者との関係でも建材メーカーが本件警告情報の表示義務を負うか否かが争われている。

Ⅱ 判決の要旨

1、原審の確定した事実関係

(1)建物解体工事において、…

執筆:弁護士 外井 浩志

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2023年12月15日第2440号 掲載
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