【裁判例が語る安全衛生最新事情】第431回 漁業組合減圧症事件 直近上位の注文者に安全配慮義務 松山地裁宇和島支部令和2年11月13日判決

2023.12.26 【安全スタッフ】
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Ⅰ 事件の概要

 被告Y1組合は漁業協同組合であり、被告Y2(個人事業主)に潜水をして養殖いけすと海底のアンカーをロープでつなぐ作業を依頼した。ところが、Y2は、当日、別の場所での潜水作業が予定されていたので、その潜水作業を原告Xに依頼した。

 Xは、午前8時ごろ作業現場に到着したところY1の組合員関係者6、7人が待機しており、Xは、それらの者から潜水作業をする場所やおおよその水深の説明を受け、潜水を作業を開始した。水深57mのアンカーまで潜水し、アンカーの係留具に別のロープをつなぎ、ダイブコンピューターの表示に従い、7、8分ほどかけて水深3mまで浮上し、そこでダイブコンピュータの表示に従い16分間その位置ににとどまり減圧停止をしたうえで午前8時30分に海上に浮上した。そのうえで、漁業組合の職員らは養殖いけすにXから渡されたロープをつないで、アンカーと養殖いけすをロープでつないだ。ところが、漁業組合員の1人が、すでにつないだロープが他のロープと交差していないかを再度潜水して確認してくれないかといわれ、Xは5分ほど休憩して再度交差確認のために水深20mのところまで潜水してロープが交差していることを確認した。そして、浮上したがダイブコンピューターには減圧の表示が出なかったことから、減圧停止をせずに海面まで浮上した。その後、漁業組合の者たちが、ロープ同士が交差しないようにロープを張り替えたが、Xは要請もないのに、ロープが交差していないかをもう一度確認しておく必要があると考えて自己の判断により約5分後に3度目の潜水をして、水深約15mまで潜水しロープが交差していないことを確認のうえでダイブコンピューターの表示に従い3、4分かけて浮上し、ダイブコンピューターに減圧の表示はないので減圧停止をせずに浮上した。

 その後、Xはその当日の帰途から両太腿に軽いしびれを感じるようになり、帰宅後には下半身全体にしびれが広がり、歩行が不十分になって病院に行ったが減圧症の治療ができなかった。翌日、転院のうえ減圧症の治療をし、退院後も通院を継続したが、両下肢、背部、腰部などにしびれが残った。

 所轄労働基準監督署長により労災請求は棄却され、審査請求も認められなかったので、Xは、被告としてY1、Y2に対して安全配慮義務違反・使用者責任に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。

Ⅱ 判決の要旨

1、被告Y1についての責任

 XとY1との間には、…

執筆:弁護士 外井 浩志

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2024年1月1日第2441号 掲載
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