【裁判例が語る安全衛生最新事情】第432回 宮城刑務所控訴事件 印刷機への挟まれで注意義務違反 仙台高裁令和4年8月31日判決
2024.01.11
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
被害者である原告Xは強盗殺人などを犯して無期懲役刑となり、宮城刑務所に服役中であったが、他の服役者と一緒に印刷作業に従事していたところ、Xが正常に印刷されていない紙を取り除こうとして本件印刷機に右手を差し入れたとき、Aが本件印刷機を作動させたため、本件事故に遭い、右手背裂創などの傷害を負った。
Xは、被告Y(国)に対して、本件事故の発生は宮城刑務所長およびその職員らの安全指導義務違反によるものであるとして、国賠法1条1項に基づき損害賠償請求を行った。一審判決(仙台地裁令和3年3月23日判決)は、本件事故はXがAに対して声をかけずに本件印刷機に右手を差し入れるというXの予見不可能な行為に起因して発生したものであり、Aに対して本件印刷機の用意ボタンを押す前に副担当のXに声を掛けるような指導をしなかったことなどを含めて宮城刑務所長らに職務上の注意義務違反はないとしてXの請求を棄却した。本件は、その控訴審である。
Ⅱ 判決の要旨
1、本件印刷機の仕組み
本件印刷機は、「用意ボタン」を押してから「運転ボタン」を押さなければ作動しない仕組みになっており、また、「用意ボタン」を押すと1秒程度ブザーが鳴り、…
執筆:弁護士 外井 浩志
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
この連載を見る:
2024年1月15日第2442号 掲載