【裁判例が語る安全衛生最新事情】第436回 青森三菱ふそう自動車販売事件② 客観的資料乏しいが長時間労働推認 仙台高裁令和2年1月28日判決
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、平成27年4月1日に被告Y社に雇用され、自動車整備作業に従事していたが、平成28年5月9日に首つり自殺した。原告X1はその父親、原告X2はその母親である。
被告Y社は、自動車の仕入販売および修理などを目的とする株式会社であり、八戸市内に営業所を有していた。その営業所の所長はB、上司が課長代理のCであった。
X1らは、亡Aが長時間労働の結果、適応障害にり患し、営業所内に設置された金属製のワイヤに首をつって自殺したとして、Y社の安全配慮義務違反、上司であるB、Cらが違法な長時間労働を軽減する措置を執らなかった過失があったとする不法行為責任、使用者責任を追及する損害賠償請求訴訟を提起した。一審判決(青森地裁八戸支部平成30年2月14日判決)では、亡Aの死亡が自殺であるが、その労働時間が亡Aの自殺に直結するほどの長時間労働であるとは認められないとしてX1らの請求を棄却した。本件はその控訴審判決である。なお、本件請求の労災であるが八戸労働基準監督署長は平成30年12月に業務に起因して適応障害を発症し自殺したものとして業務上決定をしている。
Ⅱ 判決の要旨
1、労災認定について
亡Aの自殺の原因については、本件労災認定は認定基準に基づき、専門部会の意見を聴いたうえで業務に起因する適応障害にあると認定するので、便宜、まず、本件労災認定の判断の適否から検討するに、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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