【「もしも…」に備えるメンタルヘルス対策】第11回 リスクが高い人の傾向と予防策 “頑張り過ぎ”は抑止を 講話で疲労に気付かせる/長濱 さつ絵

2024.03.21 【労働新聞】
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上司が受容的にサポートを

 今回は、メンタルヘルス不調になりやすい人の傾向と予防策についてお話したい。まず、睡眠や栄養が足りていない人はメンタルヘルス不調のリスクが高まる。これは第4回第5回の連載で詳しく述べた。

 たとえば長時間残業をしている人でも、毎日の睡眠がきちんと取れている人(仕事の日と仕事がない日の起床時間に差がない人)は、疲労が溜まりにくい。逆に、帰宅時間が遅くなったときに睡眠時間を削る傾向のある人は、疲労が溜まりやすい。若いうちは容易に疲労が回復するが、睡眠負債が続いたまま年を重ねるとだんだん疲労が蓄積し、メンタルヘルス不調のリスクが高まる。職場での対策としては、健康講話や1on1・産業医面談などでの睡眠と栄養の健康情報提供がある。

 次に、頑張り過ぎてしまう人、休むことに罪悪感を感じてしまう人、完璧を求めてしまう人である。これらの人は、自分の心と体の疲労に気付かず(あるいは気付いていても)無理をしてしまうため、頭では頑張りたいと思っても、ある程度のところで心と体がストップをかけ、休養に至る。自身の疲労に気付いてもらうことが大切であり、ストレスチェック、ワークエンゲイジメント測定、衛生講話の活用が有効になる。

 気付いてもらった後は、頑張り過ぎない勇気を自身で身に着けてもらう必要がある。これらの人たちは、「できる自分」でいることに責任感を持ち過ぎていることも多い。「できない自分」、「完璧ではない自分」が存在することを認め、受容するためには職場の心理的安全性が必須である。上司の受容的なサポートが重要であるため、職場では上司のコミュニケーションスキルの向上を図りたい。

自分の想像と事実は区別を

 次に、想像力が豊かな人も疲労を溜めやすい。相手がどう感じているかを想像して気を遣い過ぎてしまう場合と、未来を想像して不安になってしまう場合がある。相手の気持ちを想像することは人間関係を円滑にするために重要だし、不安は人間として当然の感情である。ただし、ネガティブな想像は脳疲労を起こしやすい。不安にはマインドフルネスや認知行動療法が、…

筆者:長濱産業医事務所 代表社員・医学博士 長濱 さつ絵

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令和6年3月25日第3442号13面 掲載
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