【ぶれい考】「悪化」時の基準を緩和/鎌田 耕一
2024.04.04
【労働新聞】
仕事が原因でうつ病などの精神障害を発病した場合に、労災認定する基準が昨年9月に12年ぶりに改正された。なかでも、認定のハードルが高いとされた「精神障害の悪化」の場合の基準が緩和された点は注目に値する。
精神障害(発病自体には業務起因性がない)を抱えている従業員が、精神障害を悪化させた場合、その悪化について労災認定できるかは難問の1つとされてきた。改正前の認定基準は、悪化の前に月間160時間を超える異常な長時間労働など、極めて限定的な特定の出来事(「特別な出来事」という)がなければ、労災と認めなかった。すでに精神障害を発病して治療が必要な状態にある者は、些細な心理的負荷に過大に反応するなどの特性を考慮すると、悪化の前に強い心理的負荷があっても、それだけでは仕事を悪化の原因と判断することは医学上困難とされたからである。
しかし、精神障害の悪化につき業務起因性を争った裁判例には、…
筆者:東洋大学 名誉教授 鎌田 耕一
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令和6年4月8日第3444号4面 掲載