【対応力を鍛える人事学探究】第76回 労働協約の効力 個別組合員の合意を 書面に署名などが必要/池田 知朗
2024.04.04
【労働新聞】
発生済債権に遡及はできず
労働者の労働条件を不利益に変更する労働協約が、個別組合員に対しては効力を有しないとされた事案として、平尾事件(最一小判平31・4・25)を紹介する。労働組合が、経営状態が悪化していた会社との間で賃金の支払いを猶予する内容の労働協約を締結し、猶予した賃金債権を放棄する旨の労働協約も結んだところ、当該組合に所属していた組合員が、会社に対して、当該猶予および放棄の対象となった賃金の支払いなどを請求した事案である。
一審および二審判決では、いずれも労働協約による賃金支払いの猶予ないしは賃金債権の放棄の効力を認め、組合員による賃金請求を棄却した。
一方、上告審判決では、次のとおり、組合員との関係を考慮し、これらの労働協約による猶予ないし放棄の効力を否定し、会社に対する賃金請求を認容した。会社と組合との間で締結した賃金債権を…
筆者:第一芙蓉法律事務所 弁護士 池田 知朗
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令和6年4月8日第3444号12面 掲載