【対応力を鍛える人事学探究】第79回 「着替え」における労働時間性 事業所内での義務か 自宅でも可能なら不該当/小山 博章
2024.04.25
【労働新聞】
指揮命令下か否かの判断に
36協定の遵守、サービス残業発生防止、長時間労働によるメンタルヘルス不調の防止など、さまざまな観点から労働時間の厳格な把握、管理が求められている。そのような状況のなかで、実務上頻繁に問題になるのが、着替え時間の労働時間性である。勤務中、制服や作業服などの着用を義務付けている会社では、始業時刻までに作業服に着替えることを求めるケースが多いが、これが労働時間に該当するか否かが問題になる。この点について、誤解している会社が多い。
労働時間該当性は、客観的にみて労働者が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価されるか否かにより判断される(三菱重工業長崎造船所事件〈最判平12・3・9〉)。作業服への着替えのように、労働者が行わなければならない始業時刻開始前の準備行為は、労務提供の債務の履行行為自体ではないので、それが使用者の指揮命令下に置かれていると評価できる特段の事情がない限り、労働時間には当たらない。
この点が問題になった事例が、上記の三菱重工業長崎造船所事件だ。会社は労働者に対し、…
筆者:第一芙蓉法律事務所 弁護士 小山 博章
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令和6年5月6日第3447号12面 掲載