【裁判例が語る安全衛生最新事情】第440回 いわきオール・宇徳等事件② 医療措置義務負う発注者の過失認めず 仙台高裁令和4年5月19日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y5社の所有する福島第一原子力発電所(1F)での復旧作業が行われていたが、その構内の車両整備工場をY5社は運営し、Y4社に委託していた。Y4社はその車両整備業務をY3社に委託していた。
亡Aは、平成24年3月にY3社と労働契約を締結し、その車両整備工場で勤務しており、Y3社の代表取締役社長が被告Y1であり、取締役総務担当が被告Y2であった。工場には整備機械、工具、材料などをY5社が準備してY4社に貸与し、亡Aらはその機材を用いて作業をしていた。亡Aは、年2回の定期健康診断において、入社当時から高血圧症の所見が出ており、平成28年11月には、大動脈弁拡張症の治療のため大動脈温存大動脈弁基部置換手術を受け、平成29年1月に復帰したものの平成29年10月末に致死性不整脈によって死亡した。
遺族である妻X1、子どもX2、X3は、使用者であるY3社、元請事業者Y4社、発注者Y5社および取締役Y1、Y2に対して債務不履行または不法行為に基づき、Y1、Y2に対しては会社法429条1項に基づき損害賠償請求訴訟を提起した。一審判決はY3社、Y1、Y2の責任を認めたものの、Y4社、Y5社に対する請求を棄却した。
本件は、その控訴審である。なお、Y1~Y3社は控訴しておらず、控訴審では専らY4社、Y5社の責任が問題となったが、そのほとんどがY5社の医療管理体制の問題であった。
Ⅱ 判決の要旨
1、事実関係
亡Aは、平成29年10月26日午後0時55分ごろ、車両整備工場において突然致死性不整脈を発症して意識を失い、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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