【裁判例が語る安全衛生最新事情】第441回 警視セクハラ事件 性差別発言に人格権の侵害認める 東京高裁令和5年9月7日判決
事件の概要
原告Xは平成5年に警察庁に入職した女性の警察官である。平成26年4月からは警察庁の対策室の課長補佐として犯罪収益に関する資金分析をしていた。被告Yは、昭和61年に県警に採用された男性の警察官であり、平成26年3月から警察庁に出向し、Xと同じ対策室の課長補佐を務めていた。
平成27年1月、Xは、上司に対して「Yの異常言動について」という書面を提出してセクハラ被害を受けた旨を申告した。警察庁の監察官は平成27年3月には関係者に事情聴取を行い、YがXに対して平成26年4月から平成27年1月までの間、性的な言動をするセクハラ行為があったと認定した。
また、Xは、セクハラ被害を受け、それに起因する抑うつ状態などの精神障害を受けたとして公務災害の請求をし、平成29年3月10日付けで国家公務員災害補償法に基づく補償を受けることが認定された。
Xは、Yに対して慰謝料請求をしたが、応じないため損害賠償請求訴訟を提起した。ところが、一審の東京地裁(令和3年10月19日判決)は、Xの請求を棄却した。そのため、Xは控訴した。
判決の要旨
1、本件露出行為について
Yは、平成26年4月にメンバー7人で行われたYの歓迎会の2次会のカラオケ店において、自己のズボンのベルトをゆるめてボタンを外し、チャックを下げ、自然にズボンが脱げる状態にして歌にあわせて踊ったために足の付け根辺りまでズボンがずり落ち、自己の着用していた白いシャツないしステテコを露出させる行為をしたと認められる。
この露出行為は、Xに対して不快感を与えたものであり、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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