【多様な働き方を支える 限定契約の実務】第8回 能力不足解雇に与える影響① 配転は必須といえず “新卒採用”と根本異なる/安倍 嘉一

2024.05.30 【労働新聞】
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育成の前提があるか

 限定契約が問題になる場面として、整理解雇以外に能力不足の解雇がある。限定契約が締結されておらず、企業に広く配転命令権が認められているケースにおいては、労働者が特定の職種、特定の勤務地でうまく仕事ができないとされた場合でも、他の職種や勤務地であればうまく仕事ができることがある。そのため、ただちに解雇に至るのではなく、配転命令によって他の職種や他の勤務地に異動させて再度様子を見るということがしばしば行われる。このような手順を踏んだ結果、解雇が有効とされた事例としては、教育・指導の機会を付与すべく、労働者を配置転換してさらに指導を継続したが、改善が見られなかった日水コン事件(東京地判平15・12・22)などが挙げられる。

 能力不足を理由とした解雇において、限定契約がどのような影響を及ぼすのかが問題となる。とくに、中途採用によって専門性の高い人材を採用した場合に、配置転換の必要性が問題となることが多い。そこで今回は、ドイツ証券事件(東京地判平28・6・1)を取り上げる。

(1)事案の概要

 会社(被告)は、ドイツ銀行グループの在日証券業務を行う日本法人である。労働者(原告)は、昭和63年以降、複数の金融機関でマネージャーやバイスプレジデントといった要職を歴任し、多種多様な金融商品を取り扱った経験、トレーダー、モデリングなどのヘッジファンドのコンサルティングの仕事の経験、日本以外にも複数の外国で勤務した経験を買われ、平成16年7月13日に会社と表の条件で労働契約を締結した。

 22年12月に会社は労働者に対して退職勧奨したが…

筆者:森・濱田松本法律事務所 弁護士 安倍 嘉一

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令和6年6月3日第3451号6面 掲載
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