【裁判例が語る安全衛生最新事情】第443回 セントラルインターナショナル事件 降格による抑うつ反応で企業責任 東京高裁令和4年9月22日判決

2024.06.26 【安全スタッフ】
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Ⅰ 事件の概要

 被告Y社は、物流アウトソーシングをメーン業務とする生産加工業務、マタニティ・ベビー市場のマーケティングなどを行っている会社。原告Xは、平成25年12月に正社員に雇用された女性社員である。メディア事業部に所属し、成績優秀で、同27年1月には優秀社員表彰を受け、同年4月1日付で次長職に昇進して昇給した。

 Xは、C部長の仕事のあり方に疑問を持ち、不満を抱いており、C部長やD専務取締役に業務の改善を繰り返し要望していたが、C部長らが対応しなかったことから平成27年12月ごろには体調を崩していた。Y社は、平成28年5月に次長職を解く第1降格処分をしたが、Xからの反論を受けてこれを撤回したものの、同年7月1日にコンプライアンス委員会を開催し、Xに事実確認を行い、会社外部への不適切なメールの送信行為、上司に対する誹謗中傷、上司の命令の無視などを理由として、次長職を解く懲戒処分としての第2降格処分を行った。さらに、その後、平成29年1月にY社はXを解雇したが、労働審判となり、解雇の有効性について争われ、同年7月に労働契約上の地位を確認する旨の調停が成立した。

 Xは同年1月以降、休職し、同年10月に復職したが、その時点で労災保険の休業補償給付の請求を行い、「遷延性抑うつ反応」の発病時期を平成27年12月とする業務上災害として労災保険の適用が認められた。Xは、Y社に対して、第2処分およびそれに伴う基本給の減額が無効であることによる差額賃金の支払い、および過重業務と上司との関係悪化などをY社が放置したことによる損害賠償請求を行った。

 一審判決(さいたま地方裁判所令和2年9月10日判決)は、過重業務による業務不能期間の賃金相当額の損害のうち賃金相当額から労災保険金を控除した約5万5000円の賠償請求を認めたが、その余の請求を棄却した。そのため、原告Xは控訴した。

Ⅱ 判決の要旨

1、事実の経過

 原告Xは、平成27年12月ごろには、Y社の業務に起因して遷延性抑うつ反応を発病していたものであり、第2降格処分の処分理由は、いずれもそのころ以降の事実と認められる。また、Xは、…

執筆:弁護士 外井 浩志

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2024年7月1日第2453号 掲載

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