【事例で検証 降格・降職の運用論】第2回 「降格あり」のみで権限を取得するか 引下げ事由も記載を 就業規則に客観的基準で/横山 直樹
2024.07.18
【労働新聞】
補強の可否は不透明
新興企業や外資系企業などにおいては、就業規則に「降格することがある」との文言(別図のC)のみ記載している例が散見される。降格基準(同D)などまで含めると不利益変更(労働契約法10条)の議論になるため、柔軟に改訂できるようにあえて記載せず、制度説明資料や内規などで従業員に周知している。
降格の場合は、雇用契約の締結のみで権限を取得せず、別途の根拠規定が必要となるところ、就業規則にどの程度の内容があれば合理性あり(労契法7条、同法10条)として権限を保有するのかが論点になる(別図の論点①)。記載が不十分な場合(同Dの基準が不明確)は、内規や説明で就業規則を補強できるかも論点になる(同論点②)。
論点①に関する裁判例を概観すると、抽象的な降格規定でも特段問題にせず降格権限の保有を肯定し、一方で降格規定が抽象的な記載であることを、濫用審査のなかで濫用性を肯定する一事情として考慮するものが多い。
マナック事件(広島高判平13・5・23)では、「勤務成績が著しく悪いとき」という抽象的な降格事由の条項(別図D)で、降格権限を保有していることを前提に濫用審査を行い、降格を有効と判断した。ただし、…
筆者:石嵜・山中総合法律事務所 弁護士 横山 直樹
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
この連載を見る:
令和6年7月22日第3458号6面 掲載