【裁判例が語る安全衛生最新事情】第446回 木製食器製造工場事件 巻き込まれで覆い設けず企業に責任 札幌地裁令和3年11月18日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y社は、経木製造加工販売および木材販売などを目的とする会社であり、工場で弁当箱などの木製食品容器の製造を行っている。原告Xは、平成28年4月にY社に入社し、本件工場において木製食品容器などの製造業務に従事していた。
本件工場では、スプレッダーといわれる糊付機(以下、本件機械という)を使って作業していたが、平成30年12月10日に、Xが本件機械のローラーに左手を巻き込まれる事故が起こった。
その当時、Xは、4人で本件機械の糊落としの清掃作業を行っていた。その作業ではスイッチやハンドルを操作して湯出しやローラーの運転および停止、ハンドルを調査してローラーの間隔を調節するなどの操作をする操作役1人と、ブラシでローラーなどの清掃を行うブラシ役3人がいたが、この事故の時は、Xは操作役を担当していた。その4人のうちの1人はA班長であった。
Xは、その清掃作業中に、本件機械の回転しているローラー部分に左手を巻き込まれた。Xは、この事故により、左中指、左環指、左小指の損傷、左示指挫滅創などの傷病名で入通院した。北見労働基準監督署長は、複数の障害が残っているので併合して準用7級の障害認定を行い、療養補償の他、休業補償給付、障害補償給付を行った。
原告Xは、被告Y社に対して安全配慮義務違反を理由にして損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、事実の経過
Xは、本件事故当日操作役を担当し、熱湯注入レバーを上げて湯を出し、ローラーを回転させる操作を行った後、身体のバランスを崩すなどし、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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